自動運転のまとめと課題


レベル4,5


  最後にレベル45について.レベル4は限定された環境下での自動運転で,走行中に車載システムかインフラ(自動運転運営団体も含む)が自動運転が可能であることを教える.自動運転開始後,自動運転が不可能になると安全なところに自動的に車を止める.レベル5では限定されない環境下での自動運転で,車を出発させるとき,自動運転可能ならばそのまま出発する.不可能ならば出発しない.自動運転の可否はシステムかインフラが教える.自動運転開始後,自動運転が不可能になると安全なところに自動的に車を止める(レベル5では限定されない環境下での自動運転となっているが,システムの役割に,作動継続が困難な場合はリスクを最小にすることが挙げられているため,走行が不可能になる場合がある).

 レベル3を含めて自動運転車を実際に公道を走行させるためには,自動運転車の安全性や信頼性の評価方法が極めて重要な課題になる.この課題については以前(第3回)述べたが,そのなかでヒューマンドライバがきわめて優秀であることを指摘した.2019年の交通安全白書によれば負傷者はおよそ170万走行キロで1人発生している.物損事故はおそらくこの1/10かそれ以下の走行距離で発生しているだろう(信頼できるデータが見つからなかった).Waymoの自動運転車の自動運転平均距離4.8km(第10回参照)と単純な比較はできないが,自動運転車の信頼性は手動運転車のそれにはまだ達していないのではないかと思う.下表にWaymoの自動運転車が自動運転を解除したときの状況[1]を示す.Waymo車は2019年の総走行距離1,012,000km21回自動運転を解除しており,自動運転平均距離は極めて長い(東京大阪間往復約50回に相当する距離)ものの,解除の理由はセンサや運転制御といった基本的な部分の不具合が多くを占めている.

 

解除の理由

解除を行った者(注)

解除した場所(注)

ドライバ

システム

幹線道路

街路

センサ系の不具合

8

 

 

8

8

望ましくない車両の挙動

5

 

 

5

5

8

1

 

1

 

1

 

2

 

2

2

他の道路利用者の行動の予測違い

1

 

 

1

1

悪天候

 

3

3

 

3

無謀な道路利用者

1

 

 

1

1

16

5

4

17

21

21

21

 

(注)DMVの様式には,解除を行った者としてドライバとシステムのほかにリモートオペレータと同乗者が,解除した場所として幹線道路(highway)と街路(street)のほかに州間道路(interstate,フリーウェイ(freeway),田舎道(rural road),駐車場(parking facility)が記されている.

 

加えて「運転支援や自動運転による死傷者減が,運転支援や自動運転による新たな死傷者増よりも大きければ是とするか」という議論も必要になろう.これは,「トロッコ問題」同様,倫理に係わる問題であり,ここでは指摘だけに止めておく.

さらに自動運転車が実際に公道を走行するようになると,手動運転車との混在が発生する.このときの課題についてはこのブログの第8回「自動運転車と交通流」に述べた.

各家庭が複数台のレベル5の自動運転車をもつような時代になったらどうなるか.みんなが車に乗って繰り出すと大渋滞が発生するのではないか.いくら自動運転が渋滞を防ぐとはいえ,道路の容量には限界があり,車の台数がこの容量を超えると渋滞が発生する.また小さな子供が一人で車に乗って出かけ,途中で車が故障したらどうするか.このようなことは遠い遠い将来のこと,あるいは永久に起こらないことだと筆者は思う.

 

[1] カリフォルニア州Department of Motor Vehiclesのホームページ,2020 Autonomous Vehicle Disengagement  Reports

 

 



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