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OPINION:20180001


2018/3/20 '自動運転で死亡事故 ウーバー車両、米で歩行者はねる '、日本経済新聞


<記事の抜粋>

米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズの自動運転車がアリゾナ州で歩行者をはね、死亡させる事故が起きた。自動運転が歩行者の死亡につながった事故は初めて。

・同社はペンシルベニア州ピッツバーグなど他地域を含む北米4都市すべての公道での自動運転車の走行試験をいったん中断した。

事故は18日夜10時(日本時間19日午後)ごろ49歳の女性が歩道から外れた車道を渡っていたところ起きた。自動運転機能が作動中で、運転席には監督者も乗っていた。

・米国ではすでに1000台以上の自動運転車が実験走行中で、台数は急速に増えている。事故が起きたアリゾナ州は規制緩和が最も進み、無人運転の実験も始まっている。

一定の技術水準に達した自動運転車は悪天候時や今回事故が起きた夜間など、より難度が高い環境下での走行を増やしている。

・報告されている事故では人間の運転手との意思疎通に失敗し、車線変更時に衝突するパターンが多い。物体の認識に失敗したときに深刻な事故が起きている。

<オピニオン>

・自動運転車は、一定の技術水準に達成したというのは無責任な発言である。

米国自動車技術会(SAE)が規定したLevel 2(部分的運転自動化)まで達成したというのが正しい。Level 2は、限定的走行環境下でフォールバック(緊急時の拠り所、故障発生時に機能を維持する代替システム)はヒューマンドライバーが担う。

Level 3(条件的自動運転)では、限定的走行環境下でフォールバックを平常時はシステム(ロボットドライバー)、緊急時はヒューマンドライバーが担う義務があるが、この切り替えが最大の技術課題であり、世界中の車メーカーが挑戦中である。

ウーバーは、公道走行環境下でのロボットドライバーによる自動運転試験を実施していたが、Level 5(完全運転自動化)に相当する。

・Level 5は、全ての道路環境下でロボットドライバーがフォールバックを担う義務がある。

・今回の事故で、ロボットドライバーがあらゆる状況での物体認識が不可能であることが明らかになった。

・Level 4(高度運転自動化)相当の限定された走行環境下でのロボットドライバーによる運転技術の達成度は、明らかになっていない。

・ウーバーは、最先端AI技術を駆使して自動運転車一番乗りを目指しているが、功を焦りすぎている。

・我が国の車メーカはAI技術を過信せず着実に自動運転車開発を行うべきである。

・達成目標は、2020年までにLevel 3、2025年までにLevel 4が妥当である。


OPINION:20170007


2017.07.01 'トヨタ「AIは事故撲滅のため」 完全自動運転には慎米研究開発子会社CEOに聞く'、日本経済新聞


<記事の抜粋>

完全自動運転の実用時期

 「人の運転を助けるモードと完全自動運転モードの研究を並行して進める。安全運転支援はいち早く実用化するが、完璧な完全自動運転車はAIでも実現できないという認識が大事だ。米国の交通事故の死亡率は1億マイル(1.6億キロメートル)の走行あたり1人。完全自動運転技術でこの比率が下がり人の運転より少し安全だという程度ではいけない。人間同士と異なり機械のミスを社会は許しにくい」

 

 「トヨタは毎年1千万台の車を販売し10年間で1億台になる。年間平均走行距離が1台1万キロだと1兆キロの実走行データを得る潜在力を持つ。世界中のあらゆる条件下の膨大なデータは技術進化の重要なカギになる。目標は世界で年間125万人の交通事故死亡者をゼロにすることだ」

 

 「どんな環境でもAIが運転するレベル5の実用化はスピード競争をすべきでない。技術はできるだけ早く進化させ(次世代事業への)備えは万全にしておく。場所など限られた道路環境でAIに任せるレベル4は数年でできる。レベル5対応の車両は人の運転より事故発生率を大幅に減らせなければ投入は難しい」

 

<オピニオン>

・完全自動運転の実用化時期について、AI技術の現状を考慮した極めて慎重な見解である。

・記事中に挿入されている他社が作成した「完全自動運転車の市場は広がる見通し」を示す図は、AI技術の進展により2025年以降どんな走行環境にも対応できる自動運転車(レベル5)が2040年までに限定された走行環境にのみ対応できる自動運転車(レベル4)を徐々に淘汰すると想定している。

・年間交通事故死亡率1人/1.6億kmの米国では、年間平均走行距離1万kmと2万kmの場合のドライバーの年間交通事故死亡率は、各々1人/16,000人、1人/8,000人となる。米国人口は、3.25億人であり、年間交通事故死者数は各々約2万人と約4万人と推定できる。

・一方、世界の交通事故死亡率ランキング(2014年)を参考にすると、ブラジル(人口2.08億人)、米国(人口3.25億人)、日本(人口1.27億人)の年間交通事故死亡率は10万人当たり各々23.50人, 12.10人, 3.90人であり、年間交通事故死者数は約ブラジル4万9千人、米国3万9千人、日本5千人となる。

・日本よりも国土が大きい米国の年間平均走行距離は、日本の2倍の1台2万キロとすると日本並みの交通事故死亡発生状況と推定できるが、ブラジルの年間交通事故死者年間交通事故死者推定数約2.6万人の約2倍となり、非常に危険な道路交通環境にある。

・世界の年間125万人の交通事故死亡者数をゼロにするには、先ずはブラジル、ロシア、コロンビア等の交通事故死者数ワースト3国の交通事故低減が必須となる。しかし、ブラジルは交通マナーの改善から始めなければ低減の見通しが立たない。

・交通事故死者数ゼロは究極の目標である。その目標達成には、レベル4対応自動運転車の走行環境を徐々に拡大することが必須となる。完全自動運転の実用化時期は、あらゆる走行環境で人の運転と同等以下の事故発生率が確保できる見通しが立った時点と想定することが現実的である。


OPINION:20170006



<記事の抜粋>

1.自動運転にはいろいろなレベルがある

 米テスラのオートパイロット機能は「レベル2」にあたる。車の加速や同一車線の維持、車線の自動変更はできるが、人が車のハンドルを握り、道路に目を向けていなくてはならない。これに対し、「レベル4」の車はほとんど自動運転だ。多くの自動車メーカーは短期的にもこれを目標にしている。

2.半自動運転はフールプルーフではない(間違った使い方による事故を防ぐようにはできていない)

 運転手はいまなお、緊急時にコンピューターと運転を交代するために待機しておく必要がある。自動運転技術を高めるには、実社会での経験が欠かせない。

3.不注意運転はなお危険

 運転中に携帯電話で話すと認めた人は回答者の半数を占め、メールをする人も17%に上った。こうした不注意を防止しようと様々な規制が導入されているが、自動運転が進化しても不注意はなくならないだろう。自動運転技術は不測の事態に人間が介入し、操作する用意があるという前提に基づいている。各社は今後も自動運転技術を投入し続け、完全な自動運転車に近づくにつれて運転手に注意を求めなくなるだろう。ただし、運転手が油断するようになり、車の運転に関わらなくなれば、危険性は増す。自動運転モードが故障したら運転を交代するために何年も訓練を受ける飛行機のパイロットとは違い、普通の運転手は鑑賞していたDVDを一時停止しようと考える間もなく事故に巻き込まれるかもしれない。


<オピニオン>

・自動運転に「レベル1」から「レベル5」まであることを、一般の人達は現時点で理解していない。

・現状は、「レベル1:運転支援システム」を高度化した「レベル2:部分的運転自動化」段階であり、緊急時や故障発生時のフォールバック機能はドライバーが担う。

(参考:自動運転の定義

・自動運転に関わるフールプループ(FP: Fool Proof)の概念は、自動運転車の設計段階において、ドライバーの間違った操作や故障や誤動作を前提に、致命的な事故や損害に繋がらない安全性を保障することであり、レベルに拘らず必須要件となる。

・不注意運転は運転状態を意味し、それが原因で発生した事故や損害は全てドライバーの自己責任である。

・「レベル3:条件付き運転自動化」では、走行環境は高速道路上等に限定されるが、平常運転時のフォールバック機能がドライバーから自動運転車にシフトする。緊急時のフォールバック機能はドライバーが担う。運転状態に関しては、平常運転時にはドライバーの不注意運転等の運転状態には関係なく安全走行可能とする。また、緊急時には例え不注意運転をしていたとしても致命的な事故や損害に繋がらないようドライバーに注意喚起することが望ましい。

・「レベル4:高度運転自動化」では、走行環境は高速道路上等に限定されるが、緊急時や運転状態も含め運転に関わる全てのフォールバック機能を自動運転車が担う。

・「レベル5:完全運転自動化」では、公道も含め全ての走行環境において、緊急時や運転状態も含め運転に関わる全てのフォールバック機能を自動運転車が担う。

・フォールバック機能を車両が担う「レベル3」から「レベル5」までが自動運転車の範疇とするのが妥当である。

・自動運転車には、全ての走行環境と運転状態においても、致命的な事故や損害に繋がらないフェイルセーフ(FS: Fail Safe)機能が必須となる。

 


OPINION:20170005



<記事の抜粋>

 2017年6月1日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工は、準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」2号機を載せたH2Aロケット34号機の打ち上げに成功した。みちびきは、人工衛星からの測位信号(電波)を使って位置情報を算出するGNSS(測位衛星システム)の1つ。

 みちびきが2018年度から4機体制で本格運用されるインパクトを端的に言えば、これまでのGPSのみを使う測位に比べ、「国内ではどこでも、いつでもより精度が高い測位が可能になる」ことだ。GPSの測位誤差は理論上1m以下とされているが、実際には「一般に10m程度、悪い場合は数十m」と言われる。

  ここ数年、サッカーやラグビーなどの競技でGPSデバイスの活用が広がっている。GPSを使って選手の動きをトラッキングし、そのデータを蓄積してコンディションを管理したり、ケガのリスクを低減したりするのが目的である。

 ただし、現状では大半のデバイスがGPSのみを使っているため、トラッキングデータをもとにした戦略分析などには使えない。戦略分析には選手の位置関係の把握が重要になるが、GPSレベルの誤差では不十分なのだ。

 みちびきを含むマルチGNSSデバイスがスポーツ分野で広く活用されていくためには、現状ではクリアすべき課題もいくつかある。まず、小型で低消費電力、そして安価なチップを容易に入手できるようになることだ。基本的に測位精度を向上するためには、人工衛星の捕捉数を増やす必要がある。ただし、そのために「チップのチャンネル数を増やすほど、データの処理時間がかかり、電力消費も高まる。つまり、精度と処理時間・消費電力はトレードオフの関係がある」。加えて、デバイスの設計にも工夫が求められる。多くの人工衛星の電波を受信するため、アンテナ設計の難易度が高まる。さらに、ラグビーやサッカーなど選手同士がぶつかり合うコンタクトスポーツに応用するには、耐衝撃性や防水性の確保も必要になる。既に米Appleの「iPhone 7」やAndroid版のハイエンドのスマホには、みちびきに対応したマルチGNSSチップが搭載されている。


<オピニオン>

・現状のGPS位置精度は、地点および周辺環境で最悪数十メートルの測位誤差が生じる。

・カーナビゲーションシステムでは、GPSだけではなくジャイロやマップマッチングにより誤差1m以下の高精度な車両位置を推定している。

・マルチGNSSに加えてジャイロとマップを搭載したハイエンドスマホの位置精度は1㎝以下となる可能性がある。

・スポーツ以外にも新たな「パーソナル高精度モバイルナビゲーション」ビジネスが期待できる。


OPINION:20170004



<記事の抜粋>

 現在、人工知能(AI)技術として最も進んでいるのは自動運転技術である。世界の自動車メーカー各社がしのぎを削って開発を進めている。日本においても、国内経済の柱となる自動車産業の将来を左右する技術のため、経済産業省が当初は2030年代を目標としていたレベル4(完全自動運転)の実現を、地域限定ではあるが2020年に前倒し、自動運転車を巡る社会課題の解決にも積極的に取り組む姿勢を打ち出している。

 すぐにでも自動運転車が公道を走り出すかのように思ってしまう。だが、自動運転はそんなに簡単に実現できるのであろうか。結論から言えば、技術的観点からは“ホント”、実用・商用化の観点からは“ウソ”だ。

 機械学習をさせる場合は、さらに課題がある。当然ではあるが、国ごとに文化や道徳、倫理概念が異なる。そのため、大枠としてはほぼ同様な交通法規であっても、先ほど例示したような切迫した事態における判断の妥当性は、国ごとに異なってしまう。米国では薬局で購入できる薬が、日本では使用が禁止されている。それと同様の事が起こるわけだ。

 倫理的な面にまで踏み込んでグローバルで統一するためには、各国の法改正だけでは済まない。難易度の高い国家間の調整が必要となる。それをできないなら、AIに学習させる試行を国ごとに実施しなければならないことを意味し、国別に学習する試行量を確保する必要が生じるため、学習に対するコストが飛躍的に上昇してしまうだろう。

 倫理的、法的責任の所在についても根深い問題がある。事故が起きた場合、運転に関与していない自動車の所有者や搭乗者に責任が及ぶことには違和感があるはずだ。だからと言って、PL法(製造物責任法)を拡張して自動車メーカーに責任を負わせると、自動車メーカーは大きな賠償リスクを負うことになり、販売を自粛する可能性が高い。

 経産省も、2020年代の実現目標を「自動運転車だけが走る閉じた環境での実用化」にとどめている。オープンな公道での実用化は、社会(国民)の理解を前提に、抜本的な法改正を行わない限り不可能と言わざるを得ない。


<オピニオン>

・地域限定(高速道路等)した完全自動運転車(レベル4)は、技術的な観点で2020年には実現し、実用化・商用化に向けてのトリガーになる。

・その後、AI技術だけではなくレーダーや画像センシング技術や5G移動体通信技術の高度化と合せて実用化開発・商用化開発を継続して取り組めば、2030年代には全ての公道で個別の自動運転アプリケーションに対応可能な完全自動運転車(レベル4)が必ず実現する。

・個別の自動運転アプリケーションは、そのタイミングでの社会ニーズとリンクする。例えば、最近社会問題のなっている認知症を自覚できず衝突事故を起こす高齢ドライバーの運転に対しても、安全走行を可能にする完全自動運転車の実現。

・国別にAI学習するコストは、日本企業には負担が多くてもGoogleやMicrosoft等の超優良グローバル企業には全く問題にならない。

・AI技術はグローバル規模の研究開発が進展し、今後飛躍的に向上する。

・2030年代に実現する完全自動運転車は、全てAI任せという発想は間違っている。

・2030年代の社会ニーズにマッチした自動運転アプリケーションを実現する技術プラットフォームとそれを構成する各種要素技術の絞込みが必要。


OPINION:20170003


2017.03.23 ' トヨタ、NTTと自動運転技術で提携 5G通信活用 ' 日本経済新新聞


<掲載記事の抜粋>

 トヨタ自動車とNTTは自動車の超高速無線通信の技術で提携する。第5世代(5G)と呼ばれる技術を活用し、より安全性の高い自動運転車の実用化につなげる。トヨタは5Gの開発で先行するNTTグループの技術を取り込み、欧米勢との開発競争をリードしたい考えだ。日本の自動車と通信の最大手が協業に乗り出すことで垣根を越えた連携が加速しそうだ。

 日本勢では日産自動車・仏ルノー連合も自動運転技術でDeNAやNASAと提携済だが米マイクロソフトと提携。ホンダは既に自動運転技術でグーグルと提携済だがAI技術でソフトバンクと提携した。ただ、欧州ではBMW、ダイムラー、アウディの独高級車3社が半導体の米インテルや通信機器のエリクソン(スウェーデン)などと連合を形成。米国でもゼネラル・モーターズ(GM)がAT&Tと4Gで提携した。


<オピニオン>

・自動運転車実現には、自動車と通信・IT業界の提携は必須である。

・AI技術に基づくクラウドサービスを前提にした場合でも、本来自律的に走行する自動車の安全性は、先ずは自動車業界がリードすべきである。

・AI技術の進展に伴い、通信・IT業界もセキュリティだけではなく交通の安全性を担保することが必須となる。


OPINION:20170002


2017.02.17 ' 5G:自動運転を実現する次世代通信 '、インテル


<掲載記事の抜粋>

 自動運転車の開発では、強力な通信システムに依存する。一台一台の車はそれぞれ独立して走行しているが、実際には、他の車、あるいは路上インフラやネットワーク、さらにはデータセンターとの通信を必須とする、複雑なエコシステムの一部として機能することが肝要になる。

 自動運転を実現するには、信頼性が高く堅牢で、広範囲にわたる無線ネットワークの普及が必要。 2020 年の実用化が期待されており、検証作業は既に進行ている 5G ネットワークが基盤になる。

 1台の自動運転車は、1日に数テラバイトのデータを処理する。自動運転車は、カメラ、光で対象までの距離などを分析するライダー(LIDAR)、レーダーなど、膨大な数のセンサーによって周囲の環境に関する情報を認識する。システム全体を連携させるため、膨大なコンピューティング・パワーと処理されたデータの同期が必要なる。収集したデータを蓄積することにより、蓄えられた経験と環境から学習することができるようになる。

 今日の LTE ネットワークでは、こうした膨大な量のデータを処理できず、膨大な量のデータを迅速に転送できる5Gのミリ波テクノロジーの開発が必要となる。


<オピニオン>

・5Gが自動運転を支える技術プラットフォームを構成する基盤技術である可能性は高い。

・自動運転車の走行位置や周辺環境に対応した局所的なサービスが提供が必須となる。

・ミリ波は、局所的なサービス提供に活用できる。


OPINION:20170001



<掲載記事の抜粋>

 5Gを車車間通信に使う取り組みに熱心なのが、中国の大手通信機器メーカーHuawei Technologiesである。将来的に、見通しの悪い交差点で自動車がぶつかりそうなことを5Gで知らせて、自動でブレーキをかけるといったことを狙う。5Gの遅延時間が短い特徴を生かす。

 

 車車間通信には、「DSRC(Dedicated Short Range Communications)」と呼ばれる無線LAN規格を基に低遅延にしながら信頼性を高めた技術がある。例えばトヨタ自動車は、700MHz帯のDSRCを使った車車間と路車間の通信技術を実用化している。

 

 ただし、DSRCを使った車車間通信は普及していない。多くの自動車に専用の通信端末を搭載する必要があるからだ。車車間通信は、通信相手がいなければ役立たない。導入の初期段階では効果をほとんど得られず、消費者が目を向けない。

 

 5Gのような携帯端末向けの無線通信を車車間通信に使えると、一つの通信端末で大容量な高速通信と車車間通信を兼用できる可能性がある。車内の高速通信サービス用に導入した端末を、“ついでに”車車間通信に使えれば普及に弾みをつけやすい。


<オピニオン>

・5Gの遅延時間の短さを活かした車車間通信の実現には、第1には見通しの悪い交差点での衝突防止や隊列走行等の安全運転支援用アプリケーション毎に個別に要求されているサービス品質(QoS: Quality of Services)を満足するデータ通信性能が必須となる。

・5Gの使用周波数帯で遅延時間の短さだけではなくパケット損失率に対しても、既に安全運転支援専用に開発されている700MHz帯や5.8GHz帯のDSRC型路車協調無線システムや車車間通信システムと同等以上の通信品質を確保しないと車の安全性を担保できない。

・5G端末を大容量高速通信と低遅延高信頼通信のデュアルモード端末化する発想はリーズナブルではあるが、既に国内で5.8GHz帯DSRC型路車間通信システムとして7600万台搭載されているETC端末への車車間通信システムの導入も有り得る。その際、車車間通信の安全性に加えて利便性や快適性が端末購入者に受け入れられるかが重要なポイントとなる。

・Apple社は、昨年日本市場向けにSuicaに対応したApple Payを搭載したiPhone 7を販売した。Apple Payは、最新のセキュリティ技術やNFC技術により安全・安心なモバイル決済を可能にした。車車間通信がApple Payと同等以上の付加価値を消費者に付与できれば、5G端末でもETC端末でもデュアルモード端末化への期待は高まり早期実用化されると予想する。

・車車間通信を安全運転支援用とするならば、高速通信サービスの“ついでに”に使うという発想は、車メーカには全く許容できない。