2017年の現在,ITSといえば,自動運転,丁寧にいえば自動車の自動運転であろう.このブログも自動運転の話から始める.話を始めるまえに,「自動運転」という言葉の定義を明確にしておきたい.現在,「自動運転」という言葉が安易に(としか筆者には感じられないが)使われていて,過大な期待や誤解を生む原因となっている.
ヒューマンドライバが車を運転するとき,ドライバは,まず周辺環境を認知し,次にその結果に基づいてとるべき行動を判断し,最後に車を操作するというフィードバック系が構成されている.認知・判断・操作がドライバのタスクである.したがって主権,責任はドライバにある.いっぽう自動運転では,ヒューマンドライバが運転するときに行う認知・判断・操作をすべてシステムが行い,ヒューマンドライバはフィードバックループに含まれない.したがって主権,責任はドライバにはない.運転支援システムでは,ヒューマンドライバが行う認知,判断,操作の一部をシステムが代わって行う.ヒューマンドライバはフィードバックループに含まれる.したがってこの場合も主権,責任はドライバにある.
現在,わが国を含めて国際的に自動運転の自動化レベルが議論されている.この自動化レベルの議論では,運転支援と自動運転が詳細にレベル分けされている.最初の自動化レベルは,2013年6月に米国連邦運輸省の道路交通安全局(NHTSA)によって提案され,その後2014年1月に米国自動車技術会(SAE)によって新たな案が示され,わが国でも2014年6月にNHTSAの案に基づいた案が示されたが,現在は2016年に改訂されたSAEの案を国際標準とする方向にある.現在の案のうち,レベル,名称,フォールバック(緊急時のよりどころ,故障発生時に機能を維持する代替システム),運行設計領域(車両を走行させる環境などのこと,表には簡単に走行環境と記した)を抜粋したものを表1(内閣府仮訳)に示す.SAEでは,レベル1から5に対してDriving Automation System(運転自動化システム(内閣府仮訳))という表現を使い.レベル3から5に対してAutomated Driving System(自動運転システム(内閣府仮訳))を使うとしている.以降の話ではこの改定されたSAEのレベルに基づく.
この自動化レベルの定義について,レベル1と2に対してSAEは「automation(自動化)」という表現を使っているが,フォールバックがドライバにあるので,筆者はこれを疑問に思う.上述したように,レベル1と2に対しては「automation」を使うべきではなく,単に「driver assistance運転支援」という表現を使うべきであろう.「automation」という表現がドライバの誤解や過信を生むことになるからである.このことについては回を改めて述べたい.
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