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グリーンウエーブとISA


(最終回)


 このブログを始めるとき,まずは自動運転からと宣言して結局14回にわたって運転支援と自動運転を取り上げる結果となった.その理由は2つあって,一つは筆者の興味が運転支援と自動運転にあること,もう一つはITSの主要3大システムであるATMS(Advanced Traffic Management Systems,信号制御など),ATIS(Advanced Travelers Information Systems,カーナビなど),AVCSS(Advanced Vehicle Control and Safety Systems,運転支援,自動運転)のうち,ATMSとATISに含まれるシステムは社会に十分に浸透して使用されているが,AVCSSは導入が始まったばかりで研究段階のものも多いことである.この3大システムは,1990年代の初め,当時のIVHSアメリカ(現在のITSアメリカ)が分類,定義したもので筆者はきわめて合理的なものと考えている.

最後にあたりATMSとATISに関連した運転支援システムのうち早急に実現してほしいものを二つ取り上げる.

一つはグリーンウエーブである.これは信号の表示タイミングを路車間通信で車に伝え車内に表示して交差点を赤信号で停止することなく通過することを可能にするシステムである.ACCで車の速度制御を行うことも可能だろう.信号無視を防ぐこともできる.すでに系統式信号制御システムがあるが,グリーンウエーブによって交通流はより円滑になろう.

1980年代の初め,ジーメンスとフォルクスワーゲンは赤外線を用いた路車間通信技術を開発し,ジーメンスの本社があるミュンヘンとフォルクスワーゲンの本社があるウォルフスブルクでこの路車間通信を用いた経路誘導システムAuto-Scoutの実験を行った.ウォルフスブルクではさらにWolfsburger Welle(ウォルフスブルクの波)の名称でグリーンウエーブの実験を行った.グリーンウエーブは決して新しい話ではない.ちなみにAuto-Scoutは,その後1990年ごろにはベルリンでも実験が行われ(LISBといった),ヨーロッパの標準にする動きもあったが,沙汰止みとなった.

もう一つはISA(Intelligent Speed Adaptation,Intelligent Speed Assistance,Intelligent Speed Advisor)である.これは車を制限速度内で走行させるシステムで,警視庁の資料[1]には,制限速度を超過した交通事故は全事故の2.9パーセントであるが,死亡事故では25.9パーセントで,制限速度を超過した交通事故の死亡事故率は、超過しない交通事故の死亡事故率の11.9倍となると記されている.ISAが特に死亡事故を防ぐ効果があることがわかる.ISAの方法には制限速度を超えると警告を出す方法と強制的に制限速度以上を出させない方法がある.制限速度は車載カメラによる標識の認識やナビの地図から知ることができる.ISAは,EUや英国などでは2022年7月から警告を出す方法ですべての新発売車で義務化され,2024年7月からはすべての新規登録車で義務化される由である.将来は強制的に制限速度以上を出させない方法が採用されるかもしれない.ISAは,1990年代前半にスウェーデンのルンド大学ヒュデン教授によって提案され,その後欧州のいくつかの国で実験が行われている.わが国でも現在検討が行われているが,具体的な導入時期は未定である.かつてわが国では100km/hを越えて車を走らせると運転席でチンチン鳴っていたし,速度計も100km/hを越える部分はレッドゾーンだった.これはISAの先駆ではないか.

 

 

 「ITS」という術語は1994年に作られたが,わが国では自動運転や信号制御に関する研究は1960年代に,経路誘導に関する研究は1970年代に始まった.その後多くの実験や試行を経てその成果が現在実用化されている.そろそろ「ITS技術史」が編まれてもいいのではないか.このブログでもいくつか紹介したが,歴史に学ぶことはたくさんある.ドイツの宰相オットー・ビスマルクは「愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ」と述べている.

 

[1] 警視庁のホームページ,速度管理の意義 適切な速度管理の必要性 2020年5月22日.

 



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