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車と道路の間


 

  先回のブログで路車協調を取り上げたが,今回は路車協調の「路」と「車」の間を考える.

 ITS世界会議が三極持ち回りで1994年から毎年開催されているが,この会議の機会に自動運転に関する小さなミーティングも毎年開催されてきた.2002年シカゴでITS世界会議が開催された時のこの小さなミーティングでミネソタ大学のDonath教授から,ディジタル地図もインフラと考えるべきではないか,という発言があった.筆者はこの発言に強く同意した.というのは,1980年代に自動運転の実験を行ったとき自動運転で走行するための地図データを作成したが,そのときこの地図データは,車載の機器でも路上の機器でもないインフラであると感じたからである.

現在わが国政府が進めている自動運転プロジェクトでも高精度の3次元ディジタル地図の作成が行われている.ホンダのレベル3自動運転車はこの地図を用いている.

 話をもう少し進めよう.米国カリフォルニア州は州内の公道で自動運転の走行実験を行っている会社に対して実験車両の台数,総走行距離,自動運転での走行距離などの報告を義務付けている.2020年度の報告によれば,Waymoは,145台の車を用い,総走行距離1,012,000km,自動運転平均距離48,200kmの成果を上げている[1].自動運転平均距離は,総走行距離(各車両の走行距離の総計)を自動運転を解除(disengagement)した回数で除した距離である.Waymoの自動運転平均距離は,報告を行った全29社のうちトップの成績(第2位はCruiseの45,900km,第3位はAutoXの32,800km)であるが,その背景には何年にもわたって多数の車両を用いて走りまくって膨大なデータを積み上げた実績があるからであろう.Waymoの自動運転の技術的詳細は不明であるが,2017年に発表された資料[2]によれば,GPSではなく3次元の詳細な道路地図とセンシングデータを照合して自車位置を精密に決定し,車両周辺の道路利用者や障害物,信号表示を検出して将来軌道を予測し,これらの結果から自車の経路,速度,操舵を決定している.すなわち多数の車両を用いて,3次元道路地図を更新し続け,センサで検出した車両周辺の環境と自車の行動を蓄積して学習のためのデータを蓄積しているのではないか,と想像する.これらの地図,環境,行動に関するデータは,Waymoのきわめて貴重なインフラでおそらく門外不出だろう.

 自動運転のために各社が車を走らせまくって収集,蓄積,作成した地図や環境に関するデータやノウハウは,門外不出のディジタルインフラで,利用者全員を対象としたVICSやETCのインフラとは本質的に異なる.自動運転を進める各社がもつこのディジタルインフラの優劣が自動運転車の優劣を決めることになるのではないかと思う.

 

[1] カリフォルニア州Department of Motor VehiclesのHP,2020 Autonomous Mileage Reports

[2] Waymo: On the Road to Fully Self-Driving, Oct. 2017, pp.8-9

 



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